過去の仕事場(12)




購入後、一度も乗っていない!

車両は、Kawasakiの「GPZ900R」です。


購入したオートバイの調子が悪く、

御客様は、まだ一度も乗ることが出来ていないそうです。


タンクの中が「空っぽ」で、「ガス欠」かと思いましたが、

ガソリン・コックがダメになっていて、ガソリンが全て、流れ落ちていました。


上の写真の右側が新品です。

車両のタンクから取外した左側を見てみると、

フィルターも、サビだらけでした。


フューエル・レベルセンサーを外してみると、

サビが、この高さまで堆積していました。



キャブレターは、オーバーフローしています。

以前、どこかで清掃した時に、

先の細い何かを使ったみたいで、バルブシートに傷が有ります。


ガソリンコックがダメでも、キャブレターの油面が保てていたら、

タンクのガソリンが全て流れ落ちることは無かったはずです。



ジェットホルダは、

詰まりかけで、穴の大きさがバラバラです。

清掃して、全ての穴の大きさをそろえました。


上の写真のパーツなどは、取り外すことができて、

・通路が通ったか?

・他と同じ大きさなっているか?

目で見て、確認ができますが、

キャブレター本体の通路は、見ることができないので、

丁寧に清掃する必要があります。



キャブレター・ホルダには取付方向が有るのですが、

バラバラの向きに、組付けしていました。



上の写真は、車体から外したプラグで、

違う番手が入っていました。

電極は「真っ黒」です。

上の写真は、プラグキャップを取付したところで、正しい位置に取付しました。

写真のプラグキャップは取付方向が決まっているのですが、

車両を預かった時の向きは「バラバラ」でした。

(写真の状態が正しい位置です)



キャブレターを清掃し、正しい番手のプラグを取付し、

エンジンが始動できるようになったのですが、

水温が上がっても、ラジエータのクーリングファンが回っていません。


配線図を見ながら、テスターを当てていくと、

クーリングファン関係の、ほとんどの所で、導通がありません。

電圧を計っても、テスターの針は動かず、どこを調べても電気がきていないのです。


「テスターが壊れているのか?」、「見ている配線図が違うのか?」と思いながらも、

さらに調べていくと、とんでもないことが分かりました。

上の写真を見ると、何の問題も無いように見えますが、

ジャンクションボックス(ヒューズボックス)の横にある、

ファンリレーの接続カプラーを引っ張ってみると、

何も接続されていません。

リレーカバーの中は、「空っぽ」でした。

左側が、この車両の「空っぽ」のリレーカバーです。

右側は、別の車両から外してきてもので、

カバーの中には、ファンリレーが入っています。


無くなっている部品を発注しようとしたのですが、

純正部品のリレーは「販売終了」していることが分かりました。


必要な部品なので、市販の物を使い、代用することにしました。

リレー本体と接続カプラーの形状は合っていたので、

そのまま接続することは可能だったのですが、

市販品の配線図を見てみると、

純正部品の端子の位置と、一致しなかったので、

そのまま接続したのでは動作しません。


純正部品の配線図と合うように作成したのが、上の写真の右側の物です。

配線と接続カプラーを追加しているので、左側に写っている純正部品よりも長くなりますが、

ギボシ端子などに比べると簡単に接続できます。



リレーを接続して、回路が復活したので、

クーリングファン系統の電源コードにバッテリーをつなぎ、

スイッチングテストを繰り返すと、

クーリングファンが回ったり、止まったり、

正常に動作するのを確認しました。


ところが、

全ての配線を元にもどすと、

スイッチングテストを繰り返しても、

クーリングファンが回ってくれません。

(ファンリレーが無かったことだけが原因ではありませんでした)


さらに調べていくと、

ジャンクションボックス自体に問題があることが分かりました。

「FAN」の回路に、電気がきていなかったのです。

一番はじめに、ヒューズが切れていないのを確認していたのですが、

まさか、そのヒューズを取付している

ジャンクションボックス自体に問題があるとは思っていませんでした。


ここでも市販品を使うことにしました。

市販のヒューズ・ソケットを使い、

「FAN」の回路を、

ジャンクションボックスの外に移しました。

これで、メインハーネスから電気が流れるようになり、

クーリングファンが回るようになりました。

まず、燃料系の修理が、通常のGPZ900Rよりも、大変だったのですが、

電気系の修理が、もっと大変でした。




ライトの「Lo」と「Hi」が同時点灯

車両は、YAMAHAの「ドラッグスター400」です。


御客様は、通勤にオートバイを使われていて、

この日、会社へ行く途中、

ヘッドライトの「Lo」側と「Hi」側の両方が点灯していたと、連絡をいただきました。


夕方、帰宅される途中に、当店へ寄っていただいたのですが、

その時には、症状が消えていて、普通の点灯状態にもどっていました。

まず左スイッチ・ハウジングから上下の切替スイッチを外して、分解してみました。

ここには問題は無さそうです。

接点を清掃してから、戻しておきました。


次に、左スイッチ・ハウジングから、パッシング・スイッチを外しました。

ピンを抜いて、スプリングを外し、

スイッチを開いてみると、水滴を確認することが出来ました。

接点は電蝕を起こしている所があります。


この日の午前中は、ドシャ降りの雨で、スイッチ内に侵入した水が接点をつないでしまい、

パッシング・スイッチを操作していないのに、動作している状態になり、

「Hi」側が点灯していたのだろうと予測しました。




購入して2ヵ月の車両

車両は、「GPZ400R」です。

購入して2ヵ月のオートバイが、

「調子が悪く、アイドリングも安定しない」と御来店。

取外したキャブレターを見ると、

「#3」&「#4」は、

漏れたガソリンで、フロートチャンバーが汚れています。

「#1」&「#2」は、油面が高く、

オーバーフローしていました。


漏れ方は違いますが、

「#1」、「#2」、「#3」、「#4」、全てダメでした。


キャブレターを逆さまにして、排出したガソリンには、

細かいサビが混入しています。

フロートチャンバーの底にも、大量に堆積しています。

ガソリンコックとキャブレターの間に、社外品のフィルターを取付していましたが、

キレイな状態でした。(フィルターとしての仕事をしていないので効果無し)

ガソリンコックのフィルター部を見ると、通さなかったサビが付着していますが、

社外品のフィルターは、何も捕まえることが出来ていません。


ガソリンコックのフィルターの方が、「目が細かい」みたいで、

コックのフィルターを通り抜けたサビは、「目の粗い」社外品のフィルターを通り抜けて、

キャブレターまで届いていました。



インシュレーター(キャブレターホルダ)には、方向があるのですが、

位置を合わせずに取付していました。

バンドの締付も弱かったので、

取付位置を合わせてから、締めなおしておきました。、



キャブレターを清掃し、同調調整をして、アイドリングするようになりました。

何度か試走を繰り返して、車両を預かった時よりも、調子が良くなったのを確認して、

車両は、オーナー様のところへ、かえっていきました。



燃料系の整備をして、御客様の元へかえった車両が、

今度は、電気系のトラブルを起こして、戻ってきました。

(上の写真は、車体から外したレギュレーターです)

赤い矢印の所の接点が焼けて黒くなっています。


青い矢印の所の、冷却フィンが欠けていますが、

どうして欠損したのか、後から分かります。


接続カプラーも、レギュレーターと同じ所が焼けています。

新しいカプラーと端子を用意して、

作りなおしました。

古いレギュレーターは車体に、上の写真のような状態で取付されていました。

取付ステーが無く、上側の穴だけボルト止めしています。

(本当は、2ヶ所をボルト止め)


取付位置が低く、チェーンカバーとのクリアランスが無いので、

サスペンションが縮み、スイングアームが動作した時に、接触したのでしょう。

チェーンカバーの上部、赤い矢印の所を見ると、

冷却フィンと接触した時に出来たと思われる跡があります。

その時に、冷却フィンが欠けたのでしょう。

レギュレーターを取付するためのステーを作成して、

写真の位置に移動しました。


約40年が経過した車両で、全てのパーツの寿命がきています。

これからもトラブルは起こるでしょうが、

せっかく手に入れたオートバイなので、

修理をしながら、いたわりながら、乗ってあげてください。




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